離婚時の慰謝料について
慰謝料とは
慰謝料とは、精神的苦痛という損害に対する損害賠償金のことを言います。離婚慰謝料や、交通事故における傷害慰謝料が代表的です。
日本の法律では、私刑や私的制裁は禁止されていますが、慰謝料は金銭的な請求による社会的な制裁としての側面があると考えることが出来ます。
このページでは、離婚時の慰謝料について説明をしています。
離婚慰謝料を請求できるケース
養育費であれば、未成熟子がいる場合は、非監護親に対して請求する正当な権利があります。
しかし、慰謝料は、離婚時に必ず請求できるものではありません。
慰謝料は、配偶者のどちらか一方が離婚原因を作り、もう一方の配偶者に対して精神的な苦痛を与えた場合に発生します。
つまり、慰謝料の支払いは、離婚の原因を作った者が、精神的苦痛を被った者に対して行われます。
そのため、離婚理由が「性格の不一致」や「価値観の相違」の場合は、基本的には慰謝料が発生することはありません。
上記の理由に該当する場合は、どちらか一方に原因があるわけではないため、慰謝料を請求することは出来ないとされています。
離婚時の慰謝料には、大きく次の2種類があります。
- 離婚原因慰謝料
- 離婚自体慰謝料
離婚原因慰謝料
離婚原因慰謝料とは、離婚に至った原因行為(浮気や暴力など)から生じる精神的な苦痛に対して支払われる慰謝料のことを言います。
その主な内容は以下のようなものがあります。
浮気・不倫(不貞行為) | 配偶者以外の異性と自由な意思に基づき性的関係をもつこと。(民法第752条) |
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身体的暴力・精神的暴力 | 身体的暴力:ドメスティック・バイオレンス(DV)。 精神的暴力:心無い言動等により、相手の心を傷つけるもの。モラハラ。 |
悪意の遺棄 | 婚姻関係にある夫婦間の義務である「同居の義務」「協力義務」「扶助の義務」に対して違反をした場合。 |
例えば、不倫による不貞行為が原因で夫婦が離婚する場合、不倫をした側の配偶者は精神的苦痛を被った側の配偶者から慰謝料を請求されることになります。
離婚自体慰謝料
離婚自体慰謝料とは、離婚をするという行為それ自体から生じる精神的苦痛に対して支払われる慰謝料のことを言います。
例えば、離婚により配偶者の地位を失ったことで精神的苦痛を感じた場合これに当たります。
離婚慰謝料の相場
慰謝料の額はケースによって異なるため、一概に相場を言うのは難しいというのが実情です。
精神的な苦痛を金銭に換算することは難しく、事案ごとに異なるため、明確な基準というものは存在しません。
養育費の額は「離婚に至った原因行為の大きさ」「婚姻期間の長さ」「慰謝料を支払う側の資力」などによって決定します。
離婚の原因となった行為の程度が大きい程、多額の慰謝料を請求することが出来ます。
また、結婚から離婚までの婚姻期間が長いほど、慰謝料の額は高額になります。
そして、慰謝料を支払う相手側の資力によっても、請求できる金額は変わってきます。
実際にはケースによって異なりますが、離婚慰謝料の相場は100万~300万円程度の場合が一般的です。
ケースによっては、50万円程度になる場合や300万円以上になる場合もあります。
慰謝料は離婚協議書に
慰謝料の支払いは、口約束だけでは確実性に欠けるため、離婚協議書にまとめておくようにしましょう。
離婚協議書は、夫婦間で取り決めた離婚内容を文書化したものです。
義務と責任を書面に明文化することで、離婚後のトラブルを回避することが目的です。
離婚協議書の慰謝料の項目には、慰謝料の有無や、支払う場合の金額、支払期日、支払い方法(一括払い、分割払い)、振込手数料の負担などを定めておきます。
離婚協議書には、慰謝料の他に、離婚の合意、親権者、養育費の支払い、財産分与、子どもとの面会交流、年金分割などを記載しておくようにしましょう。
また、離婚協議書は公証人役場で公正証書にしておくことをおすすめします。
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慰謝料請求の時効
離婚慰謝料請求の時効は、離婚が成立から3年を過ぎると時効(消滅時効)が成立します。
3年の時効が過ぎると、その後は元配偶者に慰謝料の請求をすることが出来なくなります。
不貞相手への慰謝料の消滅時効は、不貞行為を知った時から3年で成立します。
慰謝料を請求する場合は、時効になる前に行いましょう。
ただし、消滅時効の期間が過ぎている場合でも、慰謝料を請求される側が時効援用手続きを行っていなければ時効は完成しません。
そのため、相手から時効を援用する旨の意思表示を受けていない場合は、慰謝料を請求することが可能です。
離婚慰謝料の請求方法
離婚慰謝料の請求権は権利のため、行使するしないは本人の自由です。
慰謝料の請求方法は、大きく口頭、書面、調停、審判という4種類があります。
慰謝料を請求する際は、普通郵便、メールで行うケースが一般的です。
相手に対して強い意思表示を示す場合は、内容証明郵便で送るようにしましょう。
内容証明郵便による催告は、時効の進行を6ヶ月間ストップさせる(時効を6か月間延長できる)効果があるため、時効を中断させる手段として使用することもあります。
まとめ
慰謝料は、離婚原因となった配偶者の有責行為によって生じた精神的苦痛に対して支払われます。
そのため、お互いに離婚に至る責任がない場合は、慰謝料を請求することは出来ないとされています。
双方に有責責任がある場合は、「お互いに慰謝料を請求しない」として、過失相殺(お互いの責任を相殺)をするケースが一般的です。
離婚協議時に取り決めた内容は、「離婚協議書」として書面に残しておきましょう。
- 慰謝料は、精神的苦痛に対する損害賠償金のこと。
- 基本的に慰謝料の請求は、相手方に有責行為がある場合に限られる。
- 慰謝料の取り決めは、離婚協議書にまとめる。出来れば公正証書にする。
- 慰謝料の時効は3年。