親権と監護権の違い
親権と監護権
離婚後、どちらが子どもを養育、監護するのかという選択は、離婚協議時において非常に重要になる問題です。
離婚をして子どもを引き取って育てる際に、よく使われる言葉に「親権」と「監護権」があります。
どちらも同じ意味合いで使用される傾向がありますが、厳密には異なる権利とされています。
このぺージでは、監護権と親権の違いについて説明をしていきます。
親権
親権とは、未成年の子どもを監護、教育し、その財産を管理するため、その父母に与えられた権利や義務のことを言います。
かつて親権は、父権と同じ意味合いを持ち、支配的な性質を持つものでした。
しかし、歴史的な変遷を経て、現代では子どもの保護という観点から捉えられるようになりました。
そのため、親権は、権利としてだけでなく、義務としての側面も有しています。
親権を構成する二つの権利
親権は、財産管理権と身上監護権の二つの権利によって構成されています。
親権 | |
---|---|
財産管理権 | 身上監護権 |
包括的な財産の管理権 | 居所指定権 |
懲戒権 | |
法律行為の同意権 | 職業許可権 |
身分行為の代理権 |
財産管理権
財産管理権は、親権のうち、子どもの財産に関する権利のことを言います。
財産管理権には、「包括的な財産の管理権」と「法律行為の同意権」の2つがあります。
包括的な財産の管理権
民法第824条 財産の管理及び代表
親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない。
親権者に財産管理権が必要となるのは、子どもに財産がある時です。
たとえば、子どもが不動産などの財産を保有していた場合、その財産関係に関与すること難しいでしょう。
ただし、日本では、ほとんどの場合、未成年の子どもが大きな財産を持つことはないため、これに該当するケースはきわめて稀だと言えるでしょう。
法律行為の同意権
一般的に、未成年者は、自由意思に基づいて法律行為するには、判断能力が不十分であると考えられています。
そのため、民法では親権者や後見人といった法定代理人が一緒に法律行為に対して、同意を与えるものと定めています。
あくまでも同意であって、本人に代わって法律行為を行なうものではありません。
身近なところでは、雇用契約も法律行為になります。
そのため、未成年者がアルバイトをする場合は、法定代理人の同意が必要になります。
また、子どもが交通事故に遭った場合も、その本人が法定代理人として損害賠償請求することは出来ないため、一般的には、財産管理権を持つ親権者が行うことになります。
法定代理人
法定代理人とは、民法の規定によって定められた代理人のことを指し、具体的には以下の3種類があります。
親権者 | 未成年の子に対して親権を行う者のこと。身分上及び財産上の監督保護・教育を内容とする権利義務を有します。 |
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未成年後見人 | 未成年者に対して親権を行う者がないとき、または、親権を行う者が管理権(財産に関する権限)を有しないときに、法定代理人となる者のこと。 |
成年後見人 | 申請者本人が成年被後見人の場合に、この者に代わって本人のための法律行為を行う者、または本人による法律行為を補助する者のこと。 |
身上監護権
身上監護権とは、親権者が未成年の子の身体的・精神的な成長を図るために監護・教育を行う権利のことを言います。
第820条 監護及び教育の権利義務
親権者は、子の監護及び教育をする権利を有し義務を負う。
身上監護権は、以下の4つの権利で構成されています。
- 身分行為の代理権
- 居所指定権権
- 懲戒権
- 職業許可権権
1 身分行為の代理権
身分行為とは、家族法上の地位、身分関係に関する法律行為のことを指します。
子どもが身分法上の行為を行うにあたっての親の同意・代理権(民法第737条、第775条、第787条、第804条)
2 居所指定権権
親が子どもの居所を指定する権利(民法第821条)
3 懲戒権
子どもに対して親が懲戒・しつけをする権利(民法第822条)
4 職業許可権権
子どもが職業を営むにあたって親がその職業を許可する権利(民法第823条)
身上監護権は、婚姻中の夫婦は子供に対して同等の権利を有する共同親権です。
しかし、日本の法律では、離婚後も共同で親権を持つことが認められていません。
そのため、離婚をした場合は、どちらか一方のみが有する単独親権となります。
監護権とは
監護権とは、子どもの近くで、子どもの世話や教育をする親の権利義務であると言えます。
監護とは、監督し保護することを意味します。
ここまでの説明でも分かる通り、監護権は、親権の一部を構成する「身上監護権」のことを指します。
つまり、監護権は親権に包括される権利であるため、"違い"というものは存在しません。
そのため、一般的には、監護権を有する者は親権を持つ者と同じです。
これは、子どもの福祉を考慮した場合、親権者と監護権者は同じ者である方が望ましいという考えに基づきます。
ただし、親権者に子どもを監護できない事情がある場合や、親権者でない片方が監護権者として相応しいと判断された場合は、例外的に監護権者が別々になることもあります。
まとめ
親権とは、子どもが成人するまでの間、子どもを養育監護しながら、子どもの財産管理をしていく権限および義務のことを指します
もちろん、離婚をした場合でも、親子関係が崩れることはありません。
しかし、日本では共同親権が認められていないため、どちらか一方の親が親権を持つことになります。
当然、親権を持つ親の権限は絶対的であるため、離婚の協議時には、子どもの親権を巡って激しい論争になる場合も少なくありません。
夫婦間の協議によって合意に至らなかった場合は、家庭裁判所の判断を仰ぐことになります。
親権に関する裁判所の判決については、圧倒的に母親側が有利となるケースが一般的です。特に、子どもの年齢が低ければ低いほど、その傾向は顕著であると言われています。
- 親権とは、未成年の子どもを監護、教育し、その財産を管理するため、親に与えられた権利や義務のこと。
- 親権には、財産管理権と身上監護権の二つがある。
- 監護権は、親権の一部を構成する「身上監護権」のことを指す。つまり、監護権は親権の一部。