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再婚後の養育費の扱いについて

再婚後の養育費の扱いについて

元配偶者の再婚による養育費への影響

養育費とは、子どもが成人して大人として自立できる年齢までにかかる費用のことを言います。


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片親で子どもを育てていくことは、簡単なことではありません。

そのため、子どもを養育しない他方の親(非監護親)には、親としての責任を果たすために養育費を支払う義務があります。


養育費は、子どもの権利であり親の義務であるため、非監護親は元配偶者が再婚をした場合でも養育費を支払う責任は残ります。


扶養義務者 民法第877条1項

直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。


ただし、再婚後に子どもが元配偶者の再婚相手の養子になった場合は、養育費の減免が可能になるケースもあります。


このページでは、再婚後の養育費の扱いについて詳しく説明しています。




再婚について

再婚とは、死別や離婚をした人が再び結婚することを言います。

日本では民法第733条の規定により、女性は前婚の解消又は取消しの日から100日間は結婚することができません。

ちなみに、かつては前婚の解消又は取消しの日から6カ月を経過した後でなければ、再婚をすることが出来ませんでした。


再婚禁止期間 (民法第733条1項)

女は、前婚の解消又は取消しの日から起算して百日を経過した後でなければ、再婚をすることができない。


これは、いわゆる「女性の再婚禁止期間」、あるいは「待婚期間」と呼ばれるものです。

女性の場合、離婚後にすぐに再婚をすると、前夫と後夫のどちらの子どもか分からなくなる場合があります。

そのため、女性が再婚をする際には、一定期間の禁止期間が設けられています。


監護親の再婚は減免理由になる

監護親(子どもを引き取って育てている親)が再婚をした場合は、養育費の減免理由になります。

ただし、再婚をするにあたって、養子縁組をしている場合としていない場合では大きな違いがあります。


結婚は、当事者同士が婚姻届の提出することで夫婦関係を生じさせる法律行為です。

そのため、再婚相手と連れ子との間で自動的に親子関係が成立するわけではありません。


血縁関係ではなく、人為的に親子関係を発生させるためには養子縁組を行う必要があります。


再婚相手と養子縁組をしていない場合

監護親が再婚をした場合でも、子どもと再婚相手が養子縁組をしなければ、原則、再婚相手に扶養義務は発生しません。


そのため、この場合の再婚は養育費に影響を与えることはありません。

非監護親は、これまで通り養育費を支払う義務があるとされています。


再婚をしたことにより、世帯年収が増加したことを理由に養育費の減額が認められる場合もあります。

とは言え、支払う養育費の減額は認められても、免除が認められるケースは極めて低いと言えます。


再婚相手と養子縁組をしている場合

子どもと再婚相手が養子縁組をしている場合は、養育費の減免(減額あるいは免除)理由になります。


養子縁組をすれば、血縁関係がなくても人為的に親子関係を築くことが出来ます。


ただし、現在、養子縁組には2種類があるため、どちらの養子縁組制度を利用しているかで扱いが異なります。


養子縁組制度

養子縁組は、民法に基づいて法的な親子関係を成立させる制度です。

普通養子縁組特別養子縁組の2種類に大別されます。


普通養子縁組
(契約型)
養親になる者と養子になる者の契約により養子縁組を成立させる形態。
家の存続などを理由に親族間で行うケースが一般的。
年齢制限はなし。
特別養子縁組
(決定型)
公的機関の宣言によって養子縁組を成立させる形態。
子どもの福祉、利益を図るために行われるケースが一般的。
制度を利用するためには、家庭裁判所に養子縁組の審判を申し立てる必要がある。
原則6歳未満(0歳~5歳)の子どもに限られる。6歳前からすでに養親となる夫妻にすでに監護されている場合は、請求する際に8歳未満。

普通養子縁組

普通養子縁組では、戸籍上、養子縁組をする親のことを養親(ようしん)と表記され、子どものことを養子(ようし)と表記されます。

養子縁組をしても養子と実親の親子関係は切れることはありません。

そのため、養子が実親との親子関係を存続したまま、養親と親子関係を作るという二重の親子関係が成立します。


この場合、1次的な扶養義務は養親が追うことになり、実親は2次的な扶養義務者になります。


親権者 (民法第818条2項)

子が養子であるときは、養親の親権に服する。

出典:wikibooks.org


子どもの養育費は、養親が優先的に負担することになります。

しかし、実親にも実子に対する扶養義務があるため、「養親に資力がない」などの理由がある場合は、養育費を請求することが出来ます。


養親、非監護親で養育費の分担をする場合は、費用の減額を考慮する必要も出てきます。


特別養子縁組

一方、特別養子縁組をした場合は、普通養子縁組とは異なり、養子と実親の親子関係は無くなります。

戸籍上は、実子と同じように長男、長女などと表記されます。


特別養子縁組は、実親が子どもを育てるにあたって問題がある場合に認められる制度です。

子どもの福祉、利益を最優先に考えた上で、養育をしてもらえる親に引き取ってもらうことが目的です。


そのため、法律的には、特別養親組成立の日以降は、養育費の支払い義務も無くなると考えられています。


ただし、特別養子縁組をするためには、いくつかの要件を満たしていることが条件となります。


また、家庭裁判所特別養子縁組成立の申立てを行い、裁判官の審判を仰ぐ必要があります。

そのため、連れ子を伴う再婚では、特別養子縁組の成立に至らないケースが多いのが実情です。


養育費の減免決定は協議・審判で

養育費の額を変更(減額・免除)する場合は、当事者間での協議、もしくは裁判所での審判によって決定されます。


扶養に関する協議又は審判の変更又は取消し (民法第880条)

扶養をすべき者若しくは扶養を受けるべき者の順序又は扶養の程度若しくは方法について協議又は審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その協議又は審判の変更又は取消しをすることができる。


元配偶者から養育費の減免申し出を受けた場合は、まずは交渉の場を設ける必要があります。

交渉で話がまとまらなかった場合は、裁判所に調停を申し立てることで、調停員を間に入れて交渉を続けることが出来ます。

それでも、決着がつかない場合は、裁判所の判断を仰ぐことになります。


当事者間での交渉

まずは、元配偶者同士で養育費の減額・免除に関する話し合いをすることになります。

可能であれば、お互いが対面して交渉の場につくことが望ましいのですが、難しい場合は電話や書面でのやり取りも可能です。


あらかじめ子どもを育てる側の親が再婚した場合のケースを考えて、離婚協議書に詳細な内容を記載していれば話はスムーズに進みます。


しかし、再婚後の養育費の減額について触れていない場合は、交渉が難航することもあります。


そのため、離婚協議時には、子どもを引き取る側の親が再婚した場合の条件を決めておくことをおすすめします。


  • 養育費を受け取る側の親が再婚した場合は、養育費の支払いを停止する。
  • 養育費を支払う側の親が再婚した場合は、支払う養育費の額を減額する。

当事者間の話し合いで決着がつかなかった場合は、家庭裁判所に調停の申し立てを行うことで交渉は継続します。


家庭裁判所に調停の申し立て

家庭裁判所に調停手続きの申し立てを行えば、調停員という第三者の客観的な意見を交えて話し合いをすることが出来ます。

調停手続では、養育費がどのくらいかかっているのか、申立人及び相手方の収入がどのくらいあるかなどの事情を調停員に伝える必要があります。


そのため、調停の申し立てを行う場合は、生活実態を明らかにするための資料や収入を証明する資料などの提出が求められます。

調停手続きでは、調停員による解決案の提示や解決のために必要な助言をしてもらうことで、合意に向けた話し合いを進めていくことになります。


調停に必要な費用

養育費の減額請求についての調停を家庭裁判所に申し立てる場合は、以下の費用が発生します。


  • 収入印紙 … 1200円分(子供1人当たり)
  • 郵便切手 … 800円~1000円

※郵便切手代は裁判所によって異なります。


裁判所の審判手続

調停で話がまとまらなかった場合は、自動的に審判手続に移行します。

審判では、当事者から提出された書類や家庭裁判所調査官の行った調査の結果など様々な資料に基づいて、裁判官が判断を決定します。


また、調停時の一切の事情も考慮されるため、調停の場で自分の主張をはっきりと示すことが大事になります。


まとめ

監護親の再婚により世帯収入が増えた場合、非監護親の再婚によって生活費の負担が増えた場合などには、養育費の減額が認められています。

ただし、養育費の支払いは、一方的に減額したり停止したりすることは出来ません。


養育費の金額を変更する場合は、当事者間で十分に事情を理解し合う必要があります。

双方の言い分が食い違う時は、家庭裁判所に調停・審判を申し立てることで合意に至るケースもあります。


養育費 ポイント
  • 再婚を理由とした養育費の減額は可能。
  • 養子縁組をしていない場合は、扶養義務は発生しない。
  • 特別養子縁組をした場合は、非監護親の養育費支払い義務はなくなる。
  • 養育費の額を変更する場合は、まずは当事者間の交渉で。

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