離婚後の養育費請求について
離婚をした後の養育費の請求
養育費の支払いは、離婚協議時に両者間で話し合いをして取り決めるのが一般的です。
義務者は、この取り決めに従って毎月支払いを続けていくことになります。
しかし、現実には、離婚後の養育費請求に関する悩みを抱えている方が数多くいらっしゃいます。
2016年の厚生労働省の統計データによると、母子家庭世帯の約60%が離婚協議時に養育費のことを十分に協議をせずに離婚していることが明らかになっています。
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このページでは、「養育費についてよく話し合わずに分かれたけど請求出来るの?」「離婚後、期間が空いてしまったけど、請求すれば元夫に養育費を支払ってもらえるの?」などの疑問について解決していきます。
養育費を支払う法的根拠
民法では、直系血族および兄弟姉妹は扶養義務があることを定めています。
民法第877条1項 扶養義務者
- 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
離婚をして別々に生活することになった場合でも、親子関係が解消されるわけではありません。
親はいつまでも子ども親であるため、離婚後であっても子ども(未成熟児)に対して扶養義務が生じます。
そのため、離婚後でも元夫に養育費を請求することが可能です。
養育費は、子どもが生活を送る上で必要になる費用です。
そのため、離婚協議時に「養育費は必要ない」と取り決めた場合でも、事情が変わって養育費が必要になれば請求することができます。
まずは、電話などで直接、相手と交渉することになります。
ただし、相手側は養育費の支給を前提とした生活をしていないため、すんなりと請求を受け入れてくれるとは限りません。
また、相手に直接連絡をとることを躊躇する人も多いはずです。
そのような場合は、内容証明郵便で養育費の請求をして下さい。
内容証明で養育費の請求をしたにもかかわらず、協議が難航して相手が支払いに応じない場合は、裁判所に調停(養育費請求調停)を申し立てることが出来ます。
養育費請求調停とは
調停手続では、調停委員の仲介の元、当事者間の養育費の分担について話し合いを行います。
話合いがまとまらず調停が不成立になった場合には、自動的に審判手続が開始されます。
審判手続では、裁判官により、一切の事情を考慮した審判が行われます。
調停制度とは
調停制度とは、民事に関する紛争の代表的な解決方法であり、裁判官が双方の言い分を聴き、証拠を調べた上で、法律に照らしてどちらの言い分が正しいかを決める制度です。
調停は、当事者同士の合意によって紛争の解決を図ることを目的とするものであり、裁判(訴訟)とは異なります。
裁判所には、民事に関する紛争の代表的な解決方法として、民事訴訟と民事調停の二つがあります。
民事訴訟(裁判)は、裁判官に強制的に判決を出して問題を解決してもらうことを目的としますが、民事訴訟は、話し合いだけで解決を図ります。
養育費は過去に遡って請求できる?
過去の養育費をさかのぼって請求することは可能です。
ただし、相手側がそれに応じてくれるかは別問題です。
また、家庭裁判所での審判で、過去の養育費の支払いを命じる例は決して多くありません。
つまり、過去の養育費を貰うことは難しいというのが現実です。
そのため、一般的には、養育費の請求をした時から支払いが認められます。
養育費は、子どもを養育していく上で、生活を維持するために必要となる費用です。
このような性質のものであるため、過去の生計のために、さかのぼって請求することは相応しくないという考え方が根底にあります。
また、過去の養育費の請求を認めてしまうと、義務者が多額の支払義務を負うことになるため、これを防ぐという意味合いもあります。
ただし、借金をして子どもの養育費を工面していた場合など、ケースによっては過去の養育費の請求が認められることもあります。
養育費の時効
養育費は、過去にさかのぼって請求することが出来ます。
しかし、離婚協議書(公正証書)で取り決めをした養育費には、時効があるため注意が必要です。
養育費は、原則、5年間の短期消滅時効にかかります。
相手が、正式に内容証明郵便で消滅時効の援用をしていた場合は、遡及効に従い、それまでに発生した養育費は全て無効になります。
養育費の取り決めを書面で正式に残していない場合は、時効はありません。
養育費の時効については、内容が少し複雑なため、詳細は別ぺージで解説していこうと思います。
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まとめ
養育費は、離婚後でも請求することが出来ます。
離婚協議時に、養育費に関する具体的な取り決めをしていない場合でも請求出来ます。
ただし、離婚相手がその請求を素直に応じてくれるとは限りません。
養育費の請求に応じてもらえない場合は、裁判所で調停を申し立てる必要があります。
また、離婚協議書(公正証書)を作成していた場合は、養育費には時効があることを理解しておきましょう。
- 養育費の請求は、離婚後でも行うことが出来る。
- 請求方法は、電話、対面もしくは内容証明郵便で行う。
- 養育費は過去に遡って請求可能。ただし、一般的は請求をした時からの養育費が認められる。
- 養育費には時効がある。