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養育費の支払い期間

養育費の支払い期間

養育費はいつまで支払う必要があるの?

養育費は、子どもに自分と同水準の生活を保障しなければいけない「生活保持義務」という概念に基づいて支払義務が生じます。

生活保持義務は、たとえ支払義務者本人の経済状況が悪い場合でも、生活扶助を行う(養育費を支払う)義務があるとされています。


では、生活費はいつまで支払う必要があるのでしょうか?

このページでは、養育費の支払い期間について説明していきます。




養育費の支給期間

養育費の支給期間は、法律で明確に決まっているわけではありません。

基本的には、離婚協議時に当事者間での話し合いによって決定されます。


離婚協議の場においては、養育費に関する以下の内容についてきちんと話し合っておく必要があります。


  • 養育費の額
  • 支払いの条件
  • 支払い方法
  • 支払い期間(始期と終期)
  • 毎月の支払日
  • 事情が変わった場合の対応など

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養育費の取り決めについては、どの内容も重要になります。

特に支払い期間を巡っては、当事者間で揉める要因になりやすいため、しっかりと理解した上で決めておくことをおすすめします。


ここでは、支払い期間について詳しく掘り下げていきます。


養育費の期間を決める際は、始期と終期に着目する必要があります。


注目ポイント

始期

始期とは、物事の初めとなる時期のことを意味します。

法律用語では、法律行為の効力が発生する期限、もしくは債務の履行が請求できるようになる期限のことを言います。


つまり、養育費の支払い開始時期のことを指します。

養育費の支払いの始期については、請求時からという考え方と、請求時より以前からの支払いを認めるという考え方の2つがあります。


請求時から

請求時からとは、養育費の支払い義務の根拠を扶養義務にあるとする考え方です。

扶養の程度は、「当事者間の協議で決める」、という民法第879条の規定を根拠とします。


第879条 扶養の程度又は方法

扶養の程度又は方法について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して、家庭裁判所が、これを定める。


当事者間で協議がまとまらなかった場合は、家庭裁判所によって定めるものと規定されています。


この考え方では、扶養の義務は、協議が成立して初めて生じるものであるため、請求する前からの支払いは認められないとされています。


請求時より以前から

一方、請求前からの支払いを認めるという考え方があります。

これは、未成熟の子どもの両親の扶養義務は、「夫婦の同居、協力及び扶助の義務」にあるとする民法第752条を根拠とします。


民法第752条 同居、協力及び扶助の義務

夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。


これは、養育費というものは、未成熟子の養育を対象としているため、成人している親子や兄弟間の扶養義務とは異なるという点に着目した考え方です。


養育費の始期に関しては、ケース毎の具体的な状況から総合的判断によって決定されるものであるため、結論を出すことは難しいと言えるでしょう。

基本的には、「請求時から」とする考え方が一般的です。


終期

終期とは、ある期間の終わりの頃のことです。

法律用語では、法律行為の効力が消滅する期限のことを言います。


養育費支払いの終期については、大きく次の3つの考え方があります。


  • 満18歳まで
  • 満20歳まで
  • 満22歳まで

満18歳まで

高校卒業後、18歳で就職するケースを想定した場合の考え方です。

18歳でも就職をして給料を稼いでいる場合は、自立しているとみなされる場合があります。


現時点では、この考え方を採用するのは稀なケースであると言えます。


ただし、将来的にはその考え方が見直される可能性もあります。


2018年3月13日に、政府は、成人年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正案などが閣議決定されました。

今後国会などでは、2022年4月1日の施行を目指して審議される見通しです。

この法案が成立すれば明治時代以来続いてきた成人の定義が変わることになります。


そのため、将来的には、養育費の終期を満18歳までとする考え方が一般的なものになるかもしれません。


満20歳まで

現時点では、養育費の支給を、原則、子どもが満20歳までとする考え方が一般的です。

この考え方は、民法が成年を年齢20歳と定めていることを根拠とします。


民法第4条 成年

年齢二十歳をもって、成年とする。


つまり、監護義務は、未成年である20歳未満を対象とするため、それ以降は養育費を支払う必要性はないという考え方であると言えます。


また、単純に養育費の支払いを20歳の誕生日までと決めておけば、後々、トラブルになる可能性も少ないことも大きな理由の一つと言えるでしょう。


ただし、養育費の支払い義務は未成熟子を対象としているため、20歳を過ぎていても経済的な理由で監護や養育費を必要とする場合は、当然、受給することが出来ます。


満22歳まで

養育費の支払い終期を満22歳までとする考え方は、子どもが大学を卒業するまでという理由に起因するものです。

この場合、子どもの22歳の誕生日までではなく、大学を卒業するその年の4月までとするケースが一般的です。


家族の環境によっては、子どもの大学進学も含めて養育費を設定することが認められています。


少し古い2013年のデータですが、4年制大学への進学率については下表をご参照下さい。


2013年までの4年制大学への進学率と18歳人口の推移


子どもの大学進学率が約50%であることからも分かる通り、最近は2人に1人が大学へ通う時代です。

大学まで進学するのが珍しいことではなく、当然とする見方が一般的なものであるならば、「20歳以上でも両親が生活費・学費などのお金を負担する必要がある」ということになります。


大学進学が当然であると判断された場合(父母が大卒であり、かつ義務者にある程度の資力がある場合など)は、裁判所の審判においても、養育費支払いの終期が大学卒業までとされるケースも珍しくありません。


また、大学を浪人して入学する場合や、留年した場合、大学院に進む場合など、具体的なケースを想定して終期を決定するようにしましょう。


養育費の支払い終期は、争点になることが多いため、離婚協議時によく話し合って取り決めることをおすすめします。


離婚協議書に明記

養育費の支払い期間(始期と終期)が決定したら、その具体的な内容を離婚協議書に残しておきましょう。

「養育費をいつまで支払うか」というポイントは、離婚協議書を作成する際に意外と見落としがちです。必ず忘れることなく明記しておいて下さい。


また、公証役場で離婚協議書を公正証書化しておけば、養育費の支払いが滞った場合の回収が容易になります。

離婚協議書を作成したら、必ず公証役場(公証人役場)で公正証書にしておくようにしましょう。


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まとめ

各家庭の経済、教育等の状況は、どの家庭も一様に同じというわけではありません。

家庭環境や父母の考え方などによって、それぞれの家庭ごとに異なります。


教育に理解のある家庭であれば、大学卒業までとするでしょうし、家庭によっては高校卒業後に働くことを求めるところもあるはずです。


ただし、子どもが小さい時は、大学まで進学するのかどうか分からない場合がほとんどだと思います。

そのような時は、「原則、満20まで支払われるものとするが、大学に進学した場合は、成人になっても大学卒業までは期間を延長する」という取り決めをすることもできます。


養育費の支払い期間については、後々、トラブルになるケースが多いため、離婚協議時にしっかりと定めて、離婚協議書を作成して下さい。

また、離婚協議書は、公正証書にすることで、契約の存在・内容を証拠として残しておきましょう。


養育費 ポイント
  • 養育費の期間(始期と終期)を決める。
  • 養育費の取り決めは、離婚協議書に明記する。
  • 離婚協議書は、公証役場(公証人役場)で公正証書にする。

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