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婚姻費用分担請求とは

f:婚姻費用分担請求とは

婚姻費用分担請求について

婚姻費用分担請求とは、別居中の相手が婚姻費用を支払わない場合に、婚姻費用の請求を促すための手段の一つです。


民法では、「同居、協力及び扶助の義務」(民法752条)を定めています。

夫婦は、互いに同居して協力し扶助することが原則とされています。


そして、夫婦は、お互いに生活費を分担して拠出することで家庭生活を営むことを前提とします。


婚姻費用の分担 (第760条)

夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。


引用元:婚姻費用の分担(第760条)



別居を選択される夫婦の多くは、離婚を前提としているケースが多いようです。

通常、同居をしていない時点で夫婦生活は破綻していると判断され、離婚事由として法的に成立します。


裁判上の離婚 (民法第770条)

夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

  1. 配偶者に不貞な行為があったとき。
  2. 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
  3. 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
  4. 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
  5. その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

引用元:裁判上の離婚(民法第770条


長期間の別居生活は、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。」に該当します。


夫婦は婚姻生活を送る上で、お互いに扶助する義務があります。

法律では、同居の義務を定めていますが、別居をした場合でも正式に離婚が成立するまでは夫婦であるため、毎月かかる生活費の一部を配偶者に請求することができます。


このページでは、婚姻費用分担請求について詳しく説明していきます。



婚姻費用とは

婚姻費用とは、夫婦が結婚生活を送る上で必要な費用のことを言います。

具体的には、衣食住にかかる生活費や交際費、医療費、交通費などが含まれます。

つまり、生活費と同じ意味合いで用いられます。


生活に必要な費用(生活費)は、大きく固定費と変動費に分かれます。


  固定費 変動費
内容 毎月定期的に発生する費用 予期せぬ事態により、一時的に発生する費用
内訳 食費、家賃、水道、光熱費、衣料品費、医療費、交通費など 入院費、住宅・自動車購入、遊興費(娯楽費)、交際費など

夫婦に子どもがいる場合は、養育費も婚姻費用として計算されます。


養育費とは

未成熟子が社会自立をするまでに必要とされる費用のこと。

子どもの生活費や教育費、遊興費などを指す。


youikuhi-soudan.hatenablog.com


生活費と一概に言っても、その内訳は生活水準や地域などによって様々です。

また、各人・各家庭のライフスタイルによっても異なります。


婚姻費用分担請求の手順

婚姻費用分担請求を行う際の手順は以下の通りです。


  1. 当事者間での話し合い
  2. 家庭裁判所での調停
  3. 家庭裁判所での調停
  4. 審判手続き

当事者間での話し合い

生活費(婚姻費用)に関する詳しい内容については、夫婦間の話し合いによって決定されます。

別居している相手に対しては、メール、電話、LINE、郵送などの方法で連絡を取ることになります。


交渉時に取り決めておく必要があるのは、主に以下の項目です。


  • 生活費の金額(月額)
  • 支払期日(毎月)
  • 支払い方法(手渡し・口座振込)
  • 振込先(金融機関口座)

交渉が合意に達した場合、両者で取り決た内容は、書面に残しておきましょう。

合意書、念書などの形で書面に残しておけば、相手方からの支払いが滞った場合のトラブルを回避出来ることがあります。

「言った、言わない」の論争は、よくあることです。そのような事態を想定して、予め証拠を残しておくことが大事です。


内容証明郵便の送付

交渉で話がまとまらなかった場合は、相手に対して内容証明郵便で婚姻費用の請求を送ることも可能です。


内容証明郵便とは

日本郵便が提供する郵便サービスの一つ。一般書留とした郵便物に対して付加するサービス。

郵便物の文書の内容を郵便局(日本郵政)が証明する郵便のこと。


ただし、郵便局が証明してくれるのは、郵便を送った事実と日付であり、記載されている内容までは関知しない。


内容証明郵便の送付は、相手方に対してこちら側の意思を明確に示す行為です。

内容証明を送れば、相手に精神的なプレッシャーを与える効果があるため、すんなりと支払ってもらえることもあります。


家庭裁判所での調停

交渉・内容証明で話がまとまらなかった場合は、家庭裁判所に調停の申し立てを行うことになります。


調停とは、第三者が対立する両者の間に入って、両者の妥協点を見いだし、争いが止むようにとりなすことを言います。

裁判のように、勝敗を決めるためのものではなく、話合いによって双方が合意することでトラブルの解決を図ることが目的です。


調停手続の場では、当事者である夫婦双方の間に調停委員が入ります。


調停委員とは

紛争の調停に参加し、意見、判断を述べ、事案の解決にあたる調停委員会の構成員のこと。


申し立てを行う際に、法的な知識は必要ありません。

申立用紙に必要事項を記入して、窓口に提出することで申した手続きは完了します。

調停の費用は安く、手続きも簡単なので、あまり気負うことなく行うことが出来ます。


当事者双方が納得し、合意に至れば調停成立となります。

その後は、調停調書に従って、婚姻費用の支払いが行われます。


調停を申し立ててから解決までの期間は、大体3ヶ月以内が目安です。

一般的に、申し立て後、2、3回程度の調停期日が開かれます。


審判手続き

調停で折り合いが付かず、合意出来なかった場合は、自動的に審判手続きに移行します。

審判の申し立てを別途行う必要はありません。


審判とは、家庭裁判所の裁判官が、当事者から提出された書類や家庭裁判所調査官による調査結果などに基づいて判断を決定する手続です。

法律上では、審判は家庭裁判所家事事件および少年事件について行う手続とされています。


審判の決定は、裁判官の判断によって下されるため、当事者である夫婦双方の合意は度外視されます。

確定した審判は、執行力のある債務名義と同一の効力を持つため、支払いが滞った場合は強制執行が可能になります。


審判の結果に不服がある場合は、2週間以内に即時抗告の申し立てを行うことが可能です。

即時抗告の申し立てを行うと、同時に執行力も失うことになります。


婚姻費用分担請求が認められるケース

婚姻費用分担請求は、夫婦が別居して暮らしている場合に行われる場合が多いようです。

たとえ夫婦が同居していない場合でも、離婚が成立していないのであれば婚姻関係は継続します。


当然、別居していても夫婦であることに変わりはありません。

夫婦はお互いに扶助する必要があるため、相手方に婚姻費用の分担請求をすることが出来ます。


別居している配偶者からの請求は、原則、断ることは出来ません。

ただし、基本的には、請求者よりも相手の方が収入が多い場合に行うケースが一般的です。


もちろん、子どもを引き取って育てている場合でも、相手方に婚姻費用を請求することが出来ます。


夫婦で同居している場合でも、配偶者が生活費を支払わない場合は、婚姻費用を請求することが出来ます。

共働き夫婦の場合、お互いに生活費を出し合うことが夫婦生活を営む上での前提となります。

配偶者が意図的に生活費(婚姻費用)を支払わない場合は、悪意の遺棄とみなされ、離婚原因になり得ると考えられています。


悪意の遺棄とは

正当な理由なく、夫婦関係を破綻させる行為に及ぶこと。

生活費を渡さない、一方的な別居などがこれにあたる。


婚姻費用分担請求が認められないケース

別居の原因(不倫・DVなど)が本人にある場合は、婚姻費用(生活費)の分担請求が認められないこともあります。

仮に請求が認められた場合でも、大きく減額されるケースが多いようです。


ただし、子どもに関する養育費の請求であれば、本人に原因がある場合でも満額請求をすることが可能です。

養育費は、子どもの養育に必要な大事なお金です。

そのため、請求者本人に別居に至る原因がある場合でも、責任を問われることはありません。


「配偶者には生活費を支払いたくないけど、子どものためなら支払う」というケースも少なくありません。

子どもを引き取って育てている場合は、生活費では難しくても養育費の名目で請求するという方法もあります。


まとめ

夫婦は、お互いに協力、扶助することが原則とされています。

たとえ分かれて暮らしている場合でも、夫婦はお互いに婚姻から発生する費用を分担する義務を負います。


現在、配偶者と別居していて生活費(婚姻費用)を貰っていない場合は、婚姻費用分担請求を検討してみることをおすすめします。

 


養育費 ポイント
  • まずは夫婦で話し合い、それでまとまらなければ調停、それでもダメなら審判で決着。
  • 別居の原因が本人にある場合(悪意の遺棄)は、婚姻費用を請求するのは難しい。
  • 生活費の支払いは難しくても、子どもの養育費であれば支払ってもらえることもある。

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