養育費未払いの罰則
養育費を支払ってもらえない
「離婚をして子どもを一人で育てているけど、相手側が養育費を払ってくれない。」という声は、決して少なくありません。
養育費の不払い・未払いに関する代表的なものとしては、離婚時のゴタゴタで養育費のことをきっちり決めていなかった場合や、転職などを理由に義務者(養育費を支払う側)の収入が下がった場合などがあります。
養育費を巡るトラブルは、社会問題として取り沙汰されることもあり、その深刻さの度合いから制度の見直しも検討されているようです。
養育費は、たとえ離婚をした場合でも支払い義務があるため、相手側が「払いたくない」と主張しても、その理屈は通りません。
結婚して同居している場合、結婚しているけど別居している場合、結婚していない場合、離婚して別々の人生を送っている場合、いかなる場合でも親は子どもの養育にかかる費用を支払わなければいけません。
では、養育費の不払い・未払いが続いた場合には、罰則が設けられているのでしょうか?
このページでは、養育費を支払わなかった場合の法的措置や罰則に関する内容について説明しています。
養育費未払いの実情
厚生労働省は、2006年(平成18年)、2011年(平成23年)、2016年(平成28年)の離婚母子世帯における父親からの養育費の状況を取りまとめています。
今回は、この統計データを元に養育費未払いの実情を見ていきましょう。
母子世帯の母の養育費の受給状況
総数 | 現在も養育費を受けている | 養育費を受けたことがある | 養育費を受けたことがない | 分からない |
---|---|---|---|---|
2006年(平成18年) | 19.0% | 16.0% | 59.1% | 5.9% |
2011年(平成23年) 1,332人 |
19.7% 263人 |
15.8% 211人 |
60.7% 808人 |
3.8% 50人 |
2016年(平成28年) 1,817人 |
24.3% 442人 |
15.5% 281人 |
56.0% 1,017人 |
4.2% 77人 |
出典:厚生労働省「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」
厚労省の統計データでは、2006年は「現在も養育費を受けている人」の割合は19%でしたが、2016年には24.3%となっています。
数字だけで見ると、養育費の未払いについては若干改善しているようです。
しかし、離婚後の一定期間は養育費を受け取っていたけれど、途中で支払いが途絶えたというケース(養育費を受けたことがある)は15.5%となっており、依然として見過ごせない数字です。
また、「養育費を受けたことがない」「分からない」と答えた割合が6割にも上ることからも分かるとおり、未だに多くの問題が潜在化していることが予想されます。
実際に養育費を受け取っている離婚母子世帯は、全体の24%程度というのは、かなり低い水準であると言えます。
つまり、離婚後の8割弱の男性が、父親としての権利を果たしていないということになります。
養育費未払いによる罰則はあるの?
結論から言ってしまうと、養育費の未払いに対して、現在の民法には罰則規定はありません。
つまり、民法では、未成熟子に対する養育費の支払義務(扶養義務)を明記しているにもかかわらず、法的な罰則の対象ではないということです。
しかし、養育費の支払いには罰則が無いからといって、未払い・不払いは許されるものではありません。
子どもの養育費は、民法を根拠とします。
民法では、非監護親(子ども離れて暮らしている親)は、未成熟子に対して、自分と同水準の生活を援助する義務(生活保持義務)があると定めています。
そのため、民法の原則に則って正しく履行されなければいけません。
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養育費未払い率が高い理由
養育費の未払い率が高いのは、罰則がないことも理由の一つですが、離婚時に養育費の取り決めをしていないことも大きな要因となっています。
平成28年 母子世帯の母の養育費の取り決めの有無
総数 | 離婚 | 未婚 | ||
---|---|---|---|---|
協議離婚 | その他の離婚 | |||
総数 | 1,817人 | 1,319人 | 318人 | 180人 |
取り決めをしている | 776人 (42.7%) |
499人 (37.8%) |
253人 (79.6%) |
24人 (13.3%) |
取り決めをしていない | 985人 (54.2%) |
778人 (59.0%) |
56人 (17.6%) |
151人 (83.9%) |
分からない | 56人 (3.1%) |
42人 (3.2%) |
9人 (2.8%) |
5人 (2.8%) |
出典:厚生労働省「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」
この表から分かることは、協議離婚において6割が養育費の取り決めをしていないということです。
協議離婚は、離婚全体で約9割を占める最も一般的な離婚方法です。
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しかし、その半数以上が子どもの養育費のことについてきちんと合意していないのが実情です。
離婚の協議時には、必ず養育費について話し合いをし、離婚協議書という形で残しておきましょう。
また、離婚協議書は必ず公証役場で公正証書にしておくことを強くおすすめします。
離婚協議書を公正証書化しておけば、相手側に不払い・未払いがあった際に養育費の回収が容易になります。
もし、離婚時の交渉で「養育費は一切いらない」と言った場合でも、後で請求することは可能です。
一人親が離婚相手から養育費を貰うことは当然の権利です。
現在、養育費の支払いを受けていないという方は、子どものためにも養育費を請求しておきましょう!
しかし、自分で養育費を請求するのはハードルが高いという方も多くいらっしゃるはずです。
そのため、養育費の請求をする際は法律の力を頼る必要があります。
養育費の請求方法
養育費の請求方法には、家庭裁判所で養育費請求の調停を申し立てる方法と弁護士に依頼をして代行してもらう方法があります。
家庭裁判所で養育費請求の調停を申し立てる方法
家庭裁判所での養育費請求の調停では、調停委員が中立の立場で立ち会ってくれます。
調停委員は、当事者双方の話し合いの中で合意をあっせんし、紛争の解決に導くことが役割です。
この方法であれば、少ない費用で済むので、経済的に不安な方でも安心です。
しかし、時間や手間がかかるのがデメリットです。そして、相手と直接顔を合わせなければならないという点がネックになります。
弁護士に依頼をして代行してもらう方法
弁護士に依頼する場合は、弁護士費用がかかりますが、交渉は全て法律のプロである弁護士が行ってくれるので、相手に合わずに養育費を回収できるというメリットがあります。
また、弁護士費用は、回収した養育費の一部から支払うことになるので、依頼したあなたが負担する必要はありません。
費用面で不安な方でも安心して依頼することが出来ます。
さらに、法律上の婚姻関係にない未婚のケースでは、約8割が養育費の取り決めをしていないことが明らかになっています。
つまり、ほとんどの非嫡出子が養育費を受けていないということになります。
これは決して看過できない事態であると言えます。
非嫡出子
非嫡出子とは、法律上の婚姻関係にない男女間に生まれた子のことを言います。嫡出でない子。
一方、嫡出子は結婚している夫婦の間に生まれた子のことを言います。
非嫡出子であっても、その子どもと親子関係にある場合は、非監護親には養育費の支払い義務が生じます。
現在、相手側が養育費を支払っていない場合は、養育費の回収手続を検討してみることをおすすめします。
まず、相手の男性に対して認知の請求を行って下さい。
子ども認知をしてもらって父親であることを明らかにした上で養育費の請求をして下さい。
相手が認知に応じてくれる場合は、認知届を市役所等の戸籍係に提出してもらう必要があります。
相手が子どもの認知に応じてくれない場合は、家庭裁判所に認知や養育費の調停を申し立てて下さい。
まとめ
現時点では、養育費の未払い・不払いに罰則はありません。
しかし、子どもの養育費は必ず支払わなければならない親としての義務です。
支払わない親の言い分は様々ですが、それは決して認められるものではありません。
また、養育費を受け取る側は、感情が先行して請求を躊躇している方が多いのが実情ですが、子どもの生活のために養育費を受け取る権利があることを忘れてはいけません。
養育費の未払い・不払いで悩みを抱えている方は、まずは無料相談を利用して弁護士に話しを聞いてもらうことをおすすめします。
- 養育費を継続して受けている母子家庭は、全体の25%程度。
- 養育費の未払いに対する罰則はない。
- 協議離婚において、約6割が養育費の取り決めをしていない。
- 養育費の請求方法には、家庭裁判所で養育費請求の調停を申し立てる方法と弁護士に依頼をして代行してもらう方法の2種類がある。